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僕は自転車に乗れない 第6輪

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作:クロガネ・リン
イラスト:SAA

 ジャグラーを打っていると、いつも考えてしまうことがある。それは、これをいつまで続けるんだろうか、ということだ。コインを3枚入れて、レバーを叩く。GOGOランプが光ったら、一枚掛けでボーナスを揃う。下皿がいっぱいになったら、ドル箱に移す。ただひたすらに繰り返すこの行為に、果たして何の意味があるのか? 意味なんかありはしない。全ては金のため。食べて飲んで寝るために必要な金を稼ぐための行為だ。誰のためでもない、自分のためだけに、ただひたすら繰り返している。そもそも自分の行為が誰かのためになっているとか、そんなのは幻想だ。自己満足だ。人は自分のために生きていれば、それでいい。誰かの迷惑にならなければ、それでいいんだ。僕のようになんの取り柄も資格もない人間が一般社会に出てみろ。それこそ、色んな人に迷惑をかけることになる。だから、僕はこれでいいのだ。これしかないんだ。何も間違ってはいない。効率的に一枚でも多くのコインを獲得し、そして一秒でも長くこの生活を続けられるように努める。それが僕の生きる道だ。

 こうして何度も自問自答を繰り返しては、最後に自己正当化して終わる。いつもこうだ。だから、ジャグラーはあまり好きじゃない。自問自答の後はいつも、ひどく虚しくなるから。

「ねぇ、ちょっとナナシ! コレでいくらぐらいになるのかって聞いてんのよ!?」

 ヒステリックな声で我に返って隣を見ると、レナが下皿を指さしながらコチラを睨んでいた。ああ、そうだ。今日はコイツが隣にいるんだった。

「500円ぐらい」

「それだけ?」

「いや、違った。えーっと…まあ、8000円ぐらいか」

「そんなに?」

 打ち始めから5時間。レナも打つのにだいぶ余裕が出てきた。もちろん、まだ自分でボーナスを揃えられるほどではないが。そろそろ飽きたとか言い出すんだろうな、コイツ。

僕は自転車に乗れない 第6輪

「ねぇ、ちょっと」

 ほらきた。

「喉が渇いたんだけど」

 …買ってこい、と。もちろんジュースぐらいおごってやってもいいのだけれど、その物言いが気にくわなかったので、僕はレナの下皿にあったコインを一掴み(※1)し、景品カウンターへ向かった。

 カウンターにはサイボーグ店員、もとい、いつもの地味な店員が立っていた。僕はカウンター横の冷蔵庫からコーヒーとミルクティーを取り出し、コインと一緒に店員の前に置いた。店員がコインの枚数を確認する間、ふと胸元のネームプレートに目がいった。

――青石叶。せいせきと? いや、あおいしかなえ、か。地味な見た目のワリには綺麗な名前なんだな。

「12枚ちょうどです。どうぞ」

 無機質、という表現がぴったりな抑揚のない声でそう告げられ、僕がコーヒーとミルクティーに手を伸ばそうとした、その瞬間だった。

「彼女ですか?」

 全く予想だにしていなかった言葉が、店員の口からボソっと吐き出された。ちなみに、長く通っているはいるが、この店員と会話したのはコレが初だ。

「え…あー、いや違うけど」

 あまりに唐突な質問に、若干オドオドしながら半笑いで返してしまった。何だコレ!? 罰ゲームか!? 今頃、バックヤードで店員達が腹を抱えて笑ってるのか!? 「そりゃあもちろんそうだろうよ」って!? こんなに地味なスロニートの彼女が、あんなに若くてカワイイわけないだろうって!? いつもぼっちのクセにって!? ちくしょう、だったら自信満々に肯定してやればよかった!

 店員はそれ以上なにも言わず、直立不動で僕ではないどこかを真っ直ぐ見ていた。コーヒーとミルクティーを手に取り、モヤモヤしながら席に戻る。夢中になってジャグラーを打っているレナの横から、ミルクティーを差し出した。

「ミルクティーなんか、甘ったるくて飲んでらんないわよ」

 そう言って、レナは僕の手からコーヒーを奪い取った。仕方なく僕は残されたミルクティーの蓋を空け、一口グイッと飲み込む。あー、モヤモヤする。ぶん殴りてぇ。

「そういえば、さっきトイレから戻ってくる時に見たんだけど。なんかあっちで、台の上に変な小さい機械?みたいなのを置いて打ってる人がいたのよねー」

 ちょっと前、僕に「誰も他人なんか見てない」とか言ってたクセに、よく見てるじゃないか、コイツ。

「何アレ? なんかやってるんじゃないの? ゴトとかさ」

「ああ…いや、あれは小役をカウントする機械だ。ブドウを数えてるんだよ」

 レナはそこで「何で?」とは言わずに、すぐにバッグからスマホを取り出した。早くも自分で検索するクセがついたということだろう。これも全て、僕の教育の賜物だ。素晴らしい。

 しばらくすると、レナがいきなり喰ってかかってきた。

「こんな大事なこと、何で先に言わないのよ!?」

 おおかた、どこぞの攻略サイトかなんかに『ジャグラーの6を見抜くにはブドウ出現率の確認が必須!』とか書かれていたんだろう。

「聞かれなかったし。それに、この店じゃあ意味がないからな」

「なんでよ!?」

「6がないから」

「…はぁ? そんなのわかんないじゃない!」

「わかるさ。ちゃんと見ていれば、な」

「じゃあ、なんで数えてる人がいるのよ!? おかしいじゃない!」

「さあ、な。ブドウを数えるのが趣味なんじゃないか」

「そう…そういう人もいるのね」

 誰もが気付けるワケではない、とはあえて言わなかった。それを言えば、今度はどうやったら気付けるのかと聞いてくるに決まってる。その答えは恐らくネットのどこにも書いてないし、多くの事象から複合的に判断したうえで出した結論なので、一言で説明するのは難しい。というか、めんどくさい。

「さて、と」

 そう言って、僕は下皿のコインをドル箱に詰めて席を立った。

「じゃあ、帰るわ」

「え? 何でよ? もう閉店?」

「いや、まだだけど。閉店は22時30分だからな」

「だったら、何でよ? 観たいアニメでもあるの?」

 なんなんだ、その理由は。僕はオタクじゃないぞ。断じて違う。

「なんだっていいだろ」

「だって、その台は5なんでしょ? まだ出るんじゃないの?」

「ああ、たぶんな」

「だったら続けなさいよ! アンタ、プロなんでしょ!?」

「だからこそ、これぐらいで引いておくもんなんだよ」

 半分本当で、半分嘘だ。今後もこの状況を維持するために、普段からこのホールでは閉店までブン回したりしないのだが、さすがにこの時間でヤメるのは早すぎる。だからといって、バカ正直に「これから客が増えるから、お前と一緒に打ってたら目立つだろ」と素直に言う必要もない。

「なんなら、お前がこの台を打ってもいいんだぞ」

僕は自転車に乗れない 第6輪

 レナは納得がいなかないという顔をしながらも、一瞬の間の後に下皿のコインを元・僕の打っていた台に移し始めた。たぶん出る、という僕の言葉をバカ正直に信じたのだろう。まあ、今回はそれが正解なんだけど。

「じゃ、頑張れよ」

 そう言い残して、僕はレナに背中を向けた。ドル箱を持ってジェットカウンターへ向かうと、そこにはまるで僕が来るのがわかっていたかのように、地味な店員が待ち構えていた(※2)。さすがサイボーグ店員。

 ジェットカウンターに吸い込まれていくコインを眺めながら、僕はいつもの虚しさに襲われていた。

 勝つだけなら誰でもできるんだよ。勝つだけなら…。

 

 

※1.当然、レナは「ちょっと、何すんのよ泥棒!」と騒いだが、無視してやった 
※2.もちろんただの偶然だとは思うが、僕がシマの角を曲がる時にはすでにジェットカウンターが作動していたし、彼女もドル箱が受け取りやすいよう両手を構えた状態で立っていた

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